飛行機は年々運行便数が増えているにも関わらず、飛行機事故は減少傾向にあります。
2014年に起きた死亡を伴う事故の数は、ここ数年では最も少なかった2012年よりも少ないようですが、事故による死亡者数は増えてしまっています。
飛行機は確率上は「最も安全な乗り物」
死亡者数は増えているとはいえ、自動車や電車に比べても飛行機は「最も安全な乗り物の一つ」なのです。
航空アナリストの杉浦一機氏は、著書『知らないと損するエアライン〈超〉利用術』の中で、「輸送実績1億人キロあたりの死亡乗客数=0.04人」「10万飛行時間あたりの死亡事故件数=0.07件」という統計データを紹介しています。
これは「飛行機に毎日乗っていても、事故に遭うのは438年に1回」という説と同じような確率になります。もちろん、毎年数百人の方が飛行機事故で亡くなっているので、事故機に搭乗してしまうリスクは常にあるのですが、それは飛行機に限ったことではなく、自動車事故などに遭う確率に比べたら比較にならないほど、危険は少ないのです。
世界の航空事故死亡者数(IATA発表)
2009 685人
2010 786人
2011 490人
2012 414人
2013 210人
2014 600人(マレーシア航空撃墜298人除)
日本国内の交通事故死亡者数(警察庁発表)
2009 4914人
2010 4863人
2011 4663人
2012 4411人
2013 4373人
2014 4113人
世界の航空機事故による死亡者数と比べると、交通事故死は日本国内の数のみで比較しても7〜10倍いるというのが現状です。
このように、自動車など他の乗り物と比べると、実は飛行機はとても安全なんです。
リスクとリスク認識は異なる
しかし飛行機事故の場合、1回の事故被害の大きさは自動車事故よりも甚大で、ニュースでも大きく取り上げられます。昨年のマレーシア航空・エアアジア、最近のドイツでの飛行機事故など記憶に新しいところです。
なので、どうしてもコワイ乗り物に思えてしまうこともありますよね。
これは、「リスク」と「ハザード」を混同してしまうからです。
リスクとは、確率的な可能性のこと。
ハザードは有害・危険なこと、を言います。
数式にするとこうなります。
リスク=ハザード×確率
飛行事故はめったに起こりません。しかし、いざ起こってしまった時のハザードは比較的大きいものになりますが、他の乗り物に比べると上記のリスク計算では非常に低くなります。
自動車事故は、一回一回の被害は大きくはありません。しかし、頻繁に起きます。一度の被害は大きくないとはいえ、尊い人命を失うことも多い事故です。ですからリスクとしては非常に高くなります。
ニュースでは、いちいちどの程度の確率で起こっているかを言ったりはしません。そして、たまにしか起こらないものだからこそ、ピックアップされるのです。故に、ハザードの大きいものが目立ってしまうのです。
リスクの高さではなく、「頻度が低くてハザードの大きいもの」に私たちの感情は騙されてしまうのです。
つまり、リスクはそこまで高くないのに、リスク認識としては非常に高いものに感じてしまうのが「飛行機」という乗り物なのです。
こうしたリスクに対する認識などについて、下記の書籍に詳しく出ていますので、良かったら一度ご一読を。
世界の安全航空会社ランキング2015
実際、飛行機の安全性はどうなのかを調べてみました。
航空会社の安全性を調査しているJACDEC(Jet Airliner Crash Data Evaluation Centre)が2015年の安全度ランキング「Airline Safety Ranking 2015」を発表しています。
これは、2014年1月〜12月までの世界の航空会社の実績に基づいた安全度のランキングで、国際航空運送協会(IATA)による運航管理・整備・危機管理・保安など8分野で国際法令、安全基準に基づき、国際運航安全監査プログラム(IOSA)などを参照、さらに過去30年の重大事故を数値に反映させた独自の指数として発表されている物です。
トップ10をみてみると、
Airline Safety Ranking 2015
01位 Cathay Pacific Airways(China,Hong-Kong)
02位 Emirates (UAE)
03位 EVA Air (Taiwan)
04位 Air Canada (Canada)
05位 KLM (Netherlands)
06位 Air New Zealand (New Zealand)
07位 QANTAS (Australia)
08位 Hainan Airlines (China)
09位 JetBlue Airlines (USA)
10位 Etihad Airways (UAE)
となっています。
日本の航空会社は、
11位 All Nippon Airways(全日空)
44位 Japan Airlines(日本航空)
となっていました。
日本人としては、全日空や日本航空は「かなり安全だろう!」と思ってしまうのですが、残念ながらTOP10には入っていませんでした。
人間は感情で動いてしまうことも多いのですが、こうしたデータに基づいたものを参考にして、冷静に判断するようにしたいですね。
こちらもご一読を。