※本記事は2026年6月時点の情報をもとに執筆しています。
金利上昇局面の時代へ
「金利が上がってきた。早めに繰上げ返済した方がいいですか?」
最近、こうした相談が増えてきました。不安になるお気持ちはよくわかります。
FPとして長年、「低金利のうちは繰上げ返済を急がず、キャッシュフロー全体で考えましょう」とお伝えしてきました。その考えは今も基本的に変わっていません。
ただ、2024年以降の金利上昇局面で「不安になってきた」「少しでもローンを減らしたい」という方が増えているのも事実です。
でも、住宅ローンだけに目を向けて判断するのは危険です。大切なのは、住宅ローンを家計全体のキャッシュフローの中で捉えること。焦って繰上げ返済してキャッシュが底をつき、車や教育費で高金利のローンを組む – これでは本末転倒です。
金利が上がってきたのは事実です。ただ、変動金利はまだ1%前後。
まずは仕組みを正しく理解した上で、冷静に判断しましょう。
金利はなぜ上がるのか?
まず、金利のしくみについて知っておきましょう。
日本銀行が「政策金利」を動かす
金利の方向を決める最大のプレイヤーは日本銀行(日銀)です。日銀は景気や物価の動向を見ながら「政策金利(短期金利)」を設定します。景気を刺激したいときは下げ(緩和)、物価が上がりすぎているときは上げ(引き締め)ます。
日本は2013年以降「年2%の物価上昇」を目標に超低金利政策を続けてきましたが、2022〜2024年にかけて物価上昇が定着。日銀はついに方針転換を決断しました。
| 時期 | 政策金利 | 内容 |
|---|---|---|
| 〜2024年2月 | マイナス〜0% | マイナス金利政策 |
| 2024年3月 | 0〜0.1% | マイナス金利解除 |
| 2024年7月 | 0.25% | 追加利上げ |
| 2025年1月 | 0.50% | 追加利上げ |
| 2025年12月 | 0.75% | 追加利上げ(30年ぶり水準) |
| 2026年6月 | 1.0% | 追加利上げ決定(31年ぶり水準) |
住宅ローン金利が決まる仕組み
住宅ローンには、借りた時に金利を定めて借りる「固定金利」と、金利が都度変わる「変動金利」があります。
変動金利は「短期プライムレート」を基準にして決まります。
日銀が政策金利を上げる → 短期プライムレートが上がる → 変動金利も上がる、という連鎖です。現在の基準金利(店頭金利)は3.125%前後。そこから銀行ごとの優遇幅(通常2%前後)を引いたものが実際の適用金利になります。
*短期プライムレートは、銀行が「優良企業」に短期間貸し出す時の最優遇金利のことです。(ざっくり)
固定金利(フラット35など)は「長期金利(10年国債の利回り)」を基準に決まります。変動金利より先行して動く傾向があり、2026年6月のフラット35は3.21%と高水準になっています。
5年ルール・125%ルールとは?
変動金利で借りている方から「金利が上がったら返済額が急増するのでは?」という声をよく聞きます。
大丈夫です。急激な返済額上昇はありません。5年ルール・125%ルールというのがあるからです。
この重要な2つのルール。
- 5年は返済額は変わらない
- 5年後に金利上昇により返済額が上がっても、それまでの1.25倍までしか上がらない
という内容です。
まず仕組みを図で整理しましょう。
重要なのは、「一旦、返済額は守られても、利息の負担は確実に増える」という点です。
金利上昇の影響は遅れてやってくるだけで、最終的には必ず返済者に降りかかります。
ただし、これを過度に恐れる必要はありません。バブル期(1990年)のような変動金利8%超という状況は、今の経済構造からは考えにくい。日銀も経済への影響を見ながら段階的に引き上げており、急激な上昇より緩やかな上昇が続くシナリオが現実的です。
具体例でわかる:金利が上がると実際どうなる?
以下は「残高2,000万円・残期間15年・現在1.1%・月返済額120,581円」を前提に、金利別に何が起きるかをシミュレーションしたものです。
まずは、金利が2.0%に上がってそれが継続した時。
次に、金利が3.5%に上がって、それが継続した場合。
そして、バブル期のように、8.5%まで金利上昇した場合(参考)
図解のポイント:多くのサイトでルールの説明はあっても実例がないため、なかなかピンと来ないものです。今の金利水準(0.9〜1.1%台)ではケースAが現実的なシナリオ。
「5年後に月12,000円増える可能性がある」と知っているだけで、対策を考えられます。
繰上げ返済より先に考えること:家計全体のキャッシュフロー
図解を見て「やっぱり繰上げ返済した方がいいかな」と感じた方も多いかもしれません。
でも、その前に一度立ち止まってください。
住宅ローンの金利だけを見て繰上げ返済を判断するのは危険です。
たとえば、変動金利0.5%台のローンを急いで繰上げ返済してキャッシュが減り、数年後に車の買い替えや子どもの教育費で3〜4%の金利のローンを組む—これでは意味がありません。
積立投資を続けていれば長期で2〜3%程度の運用は十分狙えるのに、その機会も手放すことにもなります。
住宅ローンは家計全体の中の一つのピース。キャッシュフロー全体を見て判断することが大切です。
繰上げ返済と投資・貯蓄の関係については、次回の記事で詳しく解説します。政策金利が上がると預金・債券・株式にどう影響するのか、なぜ「金利が上がったから繰上げ返済しよう」が短絡的なのかを整理する予定です。
「繰上げ返済すべきか?」FPとしての現時点の考え
事前にこうした知識を持っておくことで、「5年後に返済額が増えそうなら今から繰上げ返済で残高を減らしておこう」「いや、この5年間は投資に回してその分を増やそう」といった対策が練られます。
知っているか知らないかが、大きな差を生みます。
私の現時点での見方は、「急ぐ必要はないが、検討する価値が出てきたステージ」です。
繰上げ返済を検討していい人とは
以上を踏まえたうえで、次の3つに当てはまる方は繰上げ返済を検討してみてください。
- 余裕資金がある方
生活費3〜6ヶ月分の緊急予備資金を確保したうえで、使い道が決まっていない余裕資金がある場合。手元流動性を損なってまでやる必要はありません。 - 返済を始めてまだ数年の方(残高が多い)
ローン残高が多い時期は利息の絶対額も大きく、繰上げ返済の効果が高い。残期間が短くなってからでは効果は小さくなります。 - 金利上昇が気になってストレスを感じている方
これは損得の問題ではなく精神衛生の問題です。「ローンが気になって仕方がない」という方には、安心を買うという意味で繰上げ返済は十分に合理的な選択です。
本当の正解は家計全体の個別判断です。
ご自身の金利水準・残高・キャッシュフロー・投資状況を総合的に見て判断することが重要です。住宅ローンだけに目を向けず、家計全体のバランスで考えてみてください。「うちの場合はどうなの?」と気になった方は、お気軽にご相談ください。
今すぐできる3つのアクション
- 自分の金利タイプと現在の適用金利・返済額を確認する
変動か固定か。現在の金利は何%か。金融機関の返済予定表や通帳で確認しましょう。 - 家計全体のキャッシュフローを把握する
住宅ローンの残高だけでなく、手元資金・今後の大きな支出(教育費・車・リフォームなど)・積立投資の状況を一覧にしてみましょう。繰上げ返済の判断はその後が◎。 - 繰上げ返済を「するかしないか」ではなく「できる状態かどうか」を確認する
余裕資金があるなら、いつでも動けるよう準備しておくだけで精神的なゆとりが生まれます。焦って動く必要はありません。
金利のある世界が戻ってきた今、住宅ローンとの向き合い方を一度見直す良い機会です。
何かご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
次回は「政策金利が上がると預金・債券・株式・投資信託にどう影響するのか」を解説します。
繰上げ返済と投資の関係を整理していきますので、ぜひあわせてご覧ください。
本記事はFP(ファイナンシャルプランナー)の立場から情報提供を目的として作成しています。

