数年前からタワーマンションを使った節税スキームが話題を呼び、「タワマン節税」として富裕層を中心に人気を博していました。
しかし、マンションについては、不動産の評価額と実際の市場価格に大きな乖離があるとされ、有識者会議が開かれた結果、財産評価基本通達の改正案がパブリックコメントで公開されました。
今回は、マンションの評価方法・タワーマンションを使った節税のしくみ・今後の対応について解説したいと思います。
タワマン節税とは
「タワマン節税」とは、高層マンション(タワーマンション)を利用して相続税を節税するスキームを指します。
これは、タワーマンションの相続税評価額が市場価格よりも大幅に低く設定されているために可能となっていました。
相続財産を評価する際、現金だとそのまま相続財産評価となりますが、不動産を買っておくと、その評価が下がることがあります。
タワーマンションの場合、この評価額を大きく下げることができ、相続納税額を低く抑えることができます。
タワマン節税のしくみ
マンションの評価をする際、土地部分と建物部分を合算して計算されます。
土地は敷地面積を戸数で按分します。例えば、100戸あるとして全て同じ広さだった場合は、敷地面積の1/100相当が持ち分として評価されます。
土地部分の評価基準は「路線価」になりますが、路線価は時価の8割程度と言われていますので、市場価格より相続財産評価の方が低くなる傾向にあります。
建物部分に関しては、固定資産税評価額で計算されますが、こちらは時価の6割程度の評価となりますので、やはり建物に関しても評価額を下げることができます。
ここまでは、どのマンションも同じなのですが、タワーマンションはより節税に有利になります。
- タワーマンションのようにたくさんの戸数があるマンションだと1室あたりの評価額が少なくなる
- タワーマンションは上層階に行けば行くほど、高額で販売されている。
相続税評価において階数は加味されません。上層でも低層でも同じ広さであれば、評価額は同じ金額になる。
つまり、タワマン節税とは、
- 戸数の多いマンションは相続税評価額が実際の市場価格より大幅に低くなる
- 高層階を購入することで評価額と市場価格の差が更に大きくなる
ことを利用して相続税を節税するのです。
相続税の算定ルールを見直し
このタワマン節税が問題視され、国税庁は2024年以降の適用を目途に、評価額を実際の市場価格の6割以上に引き上げるための新たな算定方法案を公表しました。
新しい算定方法では、「築年数」「総階数(総階数指数)」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて、市場価格との乖離率を予測し、評価額が市場価格理論値の60%に達しない場合は、60%になるまで価額を補正するというものになりました。
実際にはどのような評価になるのかを挙げてみます。(日本経済新聞より抜粋)
市場価格が11900万円のタワーマンションで、築9年・43階建の23階、子供が1人で相続をした場合です。
上記事例だと、これまでは相続税12万円で済んでいたものが、508万円まで税額額が上がることになります。
改正前は、市場価格(11900万円)と評価額(3720万円)の乖離率は31%ほどでした。実際の価格の3割程度の評価になっていたのです。
これが、60%になるまで補正されたことによって、評価額が上がる=相続税が大幅に増える、ということに。
とんでもない増税ですね。
まとめ
市場価格と評価額の大きさを利用して相続税の節税策として活用されてきたタワーマンション節税ですが、今後はこれまでのような大幅な相続税軽減とはならなくなるでしょう。
しかし一方で、現金を持っておくよりは不動産を購入した方が相続税の対策として有効であるということは変わりません。
上記の例で、相続税が12万円から508万円に上がることになりますが、現金で持っていたら1790万円ほどの相続税となります。
つまり、不動産を活用すること自体は非常に有効だということです。
極端な評価減は認められないですが、タワーマンションも一般のマンションも同じように効果があるなら検討すれば良い、というのが結論です。
実際の価格・評価・売りやすさなどを調べ、現金や保険など他の相続対策・相続税対策に適した商品と比較検討することも重要です。
センセーショナルな記事やトピックに踊らされないよう気を付けましょう。