フランスの優勝で幕を閉じた今年のサッカーW杯。決勝だけでも約10億人が視聴し、スポンサー収入14億5000万ドル、その経済効果が少なくとも260億ドルと試算される世界最大級のスポーツイベントです。
W杯ロシア大会での保険事情
このような大きな大会だからこそ欠かせないのが「保険」です。
グローバルなスポーツイベントは、テロ・サイバー攻撃・試合のキャンセル・選手のケガ、事故など、カバーすべきリスクも非常に広いのです。
W杯(2018)は、31日間にわたってロシア全土11都市で64試合が開催されましたが、ロシアの地だけでなく、テレビ放映会社・商品販売会社・広告主なども自社の権益を守るために保険をかけており、ロシア大会の保険価額は総額60~70億ドルと推計されています。
ロシア大会は、番狂わせが多かった
2018年大会は、非常に番狂わせが多かった大会のように思います。
ドイツが史上初めてグループリーグで敗退したり、南米勢がベスト4に残れなかったり、大会史上最弱のホスト国といわれたロシアがスペインを破ってベスト8まで勝ち残ったり、クロアチアが決勝まで進んだり、観る側は非常に面白かったのではないでしょうか。
番狂わせが保険会社の儲けのチャンスを逃す
その番狂わせが、ある保険会社の絶好のチャンスを逃すきっかけとなりました。
読み間違えたドイツのアリアンツ社
ドイツでは、ドイツ代表が優勝した場合に、賞品を出したり大掛かりな販売キャンペーンを実施したりする会社が数多くありました。
そのため、そうしたキャンペーンやセールの費用をカバーする保険の引き受けをアリアンツ(ドイツの大手保険会社)に求めたところ、優勝する可能性が高いとして引き受けを拒否したとのこと。
ところが、前回優勝のドイツが予想外のグループリーグ敗退。アリアンツは、儲ける絶好の機会を逃してしまいました。
キャンペーン・セールの費用をカバーする保険ということは、
ドイツが優勝 → 保険金を支払う
ドイツが敗退 → 保険料(掛け金)は受け取るが保険金は支払われない
という仕組みの保険だったということですね。
断ったということは、ドイツ連覇の可能性も高いと踏んでいた、ということです。
この保険の掛金も相当高かったはずです。起こる確率の高い保険は掛金も高くなります。ドイツの優勝確率が高ければ、保険料もある程度高くせざるを得ません。
もし、引き受けていたら、高い掛け金を受け取って保険金の支払いはないという結果だったので、相当儲かったと思います。
ドイツに関してはアリアンツは儲けのチャンスを逸してしまいましたが、隣国ポーランドが優勝した場合に備える保険は引き受けていたようで、ポーランドもグループリーグ敗退したので、こちらは儲かったみたいです。
W杯でかけられる保険にはどんなものがある?
W杯を運営しているFIFAや様々な国のチームの保険をアリアンツは引き受けていますが、他の保険会社もいろんな保険を引き受けていて、その種類は多種多様です。保険金額も莫大です。
保険内容 | 保険金額 |
テロや暴力などによる傷害保険 | 10億ドル |
サイバーアタックやデータ侵害に対する保険 | 2億ドル |
試合がキャンセル・日程や場所が変更されたりする場合の保険 | 15億ドル |
スタープレイヤーのケガなどによる出場停止のための保険 | 2億ドル |
イベント開催に関する保険・お土産などの生産メーカーにかかる保険など | 5億ドル |
スタジアムや宿泊施設・交通機関などの建設不備や遅れなどの保険 | 20億ドル |
大きなイベントに伴うリスクを保険でカバーしようとする動きは、世界市場の流れらしく、ミュージシャンのツアーやフェス、美術館の展覧会やビジネスミーティングでも保険がかけられているとのこと。
リスクも細分化されたと同時にサーバー攻撃やテロなど新たな脅威も増えてきた現代だからこその対策ですね。
参考:
The Wall Street Journal[This German Insurer Wrongly Bet Its Home Country Would Win the World Cup]
Beazley_News [Helping a mega sporting event keep a clean sheet]