出張で行って参りましたインドネシアですが、この国の経済発展は目覚ましいものがあります。今回は、そんなインドネシアの保険事情についてご紹介したいと思います。
インドネシアの生命保険市場
インドネシアには55の生命保険会社(登録されているもの)があります。内国会社が31社、外資との合弁会社が24社です。この10年で会社数そのものは大きく増えているわけではありませんが、外資合弁会社は、2016年の16社から24社と大きく数を増やしています。
日本からは、日本生命・第一生命・明治安田生命・住友生命の4グループが進出をしています。(損保系は、東京海上と三井住友の2グループ)
インドネシアの生保市場は、1人あたりの生命保険料58.6ドル、世界シェア0.58%、世界第26位という状況です。
(ちなみに日本では1人あたりの生命保険料は約154,600円/年です)
アセアン主要国での位置付けは、全体ボリュームではシンガポールに次ぐ第2位となっています。ASEAN内では最も人口数の多い国であり、経済状況も好況であることから、2015年には第3位であったタイを追い抜くかたちになりました。
インドネシアでの主力保険
インドネシアでは、年金商品の販売実績はほとんどなく、伝統的な養老保険がほとんどです。養老保険とは、死亡時の保険金と満期時の満期金が同額の保険商品で、日本では郵便局(ゆうちょ)も主力商品として販売を続けてきました。日本の生命保険商品の歴史を見ても、やはり黎明期から養老保険が主力でしたので、多くの国で受け入れやすい商品なのかもしれません。
ここ最近の主力商品は、ユニットリンク保険と呼ばれるものです。
ユニットリンクは、積立金額や満期保険金額が変動する商品で、欧州でも主力を担う商品です。ここ数年増えてきた外資会社が持ち込んできました。
販売チャネル
インドネシアでは、エージェント(代理店)が販売のメインチャネルです。日本同様に1社専属と乗合(複数社を取り扱う)があり、専属チャネルがこれまでは主流でしたが、徐々に乗合の独立エージェントが増えていきているようです。このあたりも日本に似ていますね。
日本でも、長く保険会社に所属する専属営業が中心でしたが、ここ十数年、独立代理店が増えています。保険ショップと呼ばれる来店型も増えて、保険を帰る場所が多種多様になってきました。
そして金融機関による販売、いわゆるバンカシュランスもインドネシア第2のチャネルとして定着してきました。ユニットリンク商品のような投資型商品の販売が伸びているのも、こうした銀行窓口販売が多くなってきてるためなのかもしれません。
タカフル保険
インドネシは人口の約90%がイスラム教徒です。イスラム教では、シャーリアと呼ばれる規範があり、この規範に反するものは金融のしくみとしては認められません。
実は、保険はこの規範に抵触しているとみなされ、イスラム教徒の国では長く普及を拒んできた歴史があります。シャーリアには、不確実性や賭博・投機、利子が認められないのですが、保険はそれらにあたると考えられてきたのです。
保険は将来の事故やアクシデントなどをカバーする商品ですが、確実に起こるというものではありませんし、保険料よりも保険金が増えることもあるので、利子的な要素もあります。「保険」という行為自体がNGではないようですが、その不確実なものを利益対象としていることが投機に該当すると言われています。
そんなシャーリアに則ったかたちのしくみをタカフルと言います。タカフルは、従来の保険とどう違うかというと、保険契約を結んだ契約者からは大きな違いはありません。しかしながら、イスラム諸国に浸透させる仕組みとして作られ、新たなマーケットを生み出す有効な手段でもあるため、今後も大きく発展していく可能性は十分にあります。
インドネシアでは、このシャーリアに基づく免許取得会社は30社です。
まとめ
インドネシアでは、年5%を超える経済成長を遂げていて、生命保険市場としても魅力的ではあります。3億近い人口・中間層の伸長など、将来性を感じる要素も多いですが、その分競合も激しく、保険会社の統廃合を含め、大きく変動してく市場なのだろうと思います。
販売チャネルや主力商品の推移が、日本の生保の歴史に似ているのが興味深いですが、日本が50年かけて推移してきた動きが、インドネシアでは、ほんの10数年で変化してきていることも金融システムやITなどが背景にあるという時代の速さを感じます。